医学生, 研修医向け【あなたの人生を変える小児科研修】3つの心構えと医療の本質

医師のキャリア形成

【あなたの人生を変える小児科研修】3つの心構えと医療の本質

ポリクリや研修で小児科を回るときに

  • 「子どもの診察は難しそう」
  • 「親の相手もするから大変そう」
  • 「自分は絶対小児科には入らないから興味ないな」

そんなネガティブな気持ちを持ってローテしている医学生・研修医の方は少なくないと思います.

2020年の初期臨床研修制度の方針転換で, 小児科の研修は必修4週間に戻りました. ローテーターの興味があってもなくても小児科を回らなくてはいけないということです. それは研修医だけでなく医学生でも同じです.

医学生, 研修医の先生の立場からするとモチベーションを持てないまま研修期間を過ごすことはただの苦行にしかなりません.

  1. 医学生, 研修医のモチベーションが下がる.
  2. 指導医が, モチベーションのない医学生, 研修医に対して丁寧な指導を行わなくなる.
  3. 丁寧な指導を受けられない医学生, 研修医のモチベーションはさらに下がる.

という悪循環が起きてしまいます.

僕は大学病院の小児科の指導医として,これまで5年以上,  毎年50人の医学生, 30人の研修医の先生, そして小児科1年目の先生10人と接しています.

その中で若手ローテーターからもこの話を聞けてよかったと評価をもらえている3つの心構えを伝えたいと思います. 3つの心構えには医療の本質も含まれています.

3つの心構え】とは

  1. 小児病棟でお子さん・お母さん/お父さんとすれ違う時に挨拶をしよう
  2. 小児科でしか学べない成長と発達について学ぼう
  3. お父さんとお母さんになったときに役立つ小児科研修にする

です.

この記事を読むことであなたの
【医療者としての人生】も 【パーソナルな自分の人生】も
より良いものになります
.

心構えだけではよく分からないと思います背景にある医療の本質についても解説するので, ぜひ最後まで読んでいただけたらと思います.

1.小児病棟でお子さん・お母さん/お父さんとすれ違う時に挨拶をしよう.

担当している患者さんかどうかは関係なく, すれ違ったら目を見てニッコリ微笑んで, 挨拶してくださいお子さんだけでなく, 付き添っているお母さん, 面会に来ているお父さんにもニッコリ笑顔で挨拶してください.

【患者さんの立場で考える】

ここで伝えたいのは, 【患者さんの立場で考える】ということです.

もしもあなたが5歳の子どもとして入院した時のことを想像してみてください.  

すれ違う大人全員が忙しそうで, 誰も自分に目を合わせてくれなかったらどうですか?
そんなところに入院するのは怖いですよね.

子どもが診察に協力してくれるかどうかは, こういった病院にいる大人に対するイメージと無関係ではありません.

もしもあなたがお母さん/お父さんで, 自分の子どもが入院する時のことを想像してみてください.

誰も自分の子どもに挨拶せず, 早足で歩いて自分の子どもの前を通り過ぎて行ったらどうですか?
そんなところに自分の子どもを預けたくないですよね?

病院にいなくてはいけない子ども, 病院に子どもを預けなければいけない家族がいるのです.

おうちでは治せない, 病院でしか治せない病気だからこそ, 患者さんもご家族も入院するしかありません. 家に帰りたくても病気が治るまで, 治療が落ち着くまで病院にいるしかないのです.

だからこそ, その不安を少しでも減らすために私たちは挨拶をする必要がありますし,
不安なく治療を進めるためにも挨拶が必要なのです.

【医者は患者を見るが, 患者と家族も医者を見ている】

当たり前ですが, 医者は診察や検査・説明の時に患者さんをみます.
同時に, 患者さんと家族はもっと私たち医者をみています.

向き合って説明を行うときは勿論, 何気なく廊下を歩いているときやエレベーターで一緒になったときもみています.

【患者さん, 家族に見られている】と思うと嫌だなと思うかもしれませんが,

実は【患者さんに見られている】ということが医者を守ります.

コロナ禍で大きな病院の研修医が飲み会を開催して問題になるということが起きましたこれは患者さんとの距離が遠い研修医だからこそ起きたことだなと感じます.

僕だったら医者を10年近くやっているので, 僕が問題を起こしたら, 僕を信頼してくれている患者さんが失望するだろうな, 思いますし, 実際に患者さんの顔も思い浮かびます.

患者さんの顔が浮かぶので, ちゃんとルールを守ろうと思うのです.

研修医の先生の場合, 一つの科をローテートする時間が短いので, 患者さんとの関係が深まることないまま研修が進みます. 大学病院などで患者さんとの距離が遠くなることも患者さんとの関係が生まれないもう一つの理由です.

患者さんと良い関係を作ることが実は医者自身を守ります.
【医者を守っているのは患者さん】なのです.

2.小児科でしか学べない成長と発達について学ぼう

小児科は子どもを見る科ですが【小児科だからこそ学べること小児科でないと学べないこと】があります.

全ての科の研修にも当てはまることですが, その科だからこそその科でしか学べないことは何か?を意識すると研修が有意義なものになると思います.

【健康・正常を理解することが病気・病態を理解することにつながる】

小児科は【赤ちゃんが大人になる過程で起きる病気を治療する科】です.

もう少し言うと
受精卵が子宮に着床して
, 受精卵から胎児となり, 出産を経て赤ちゃんとして生まれ, 幼児期, 学童期, 思春期と進み大人になります.

その過程で

  • 成長・・・体が大きくなり
  • 発達・・・できないことができるようになり機能を獲得します

成長や発達に必要なものが足りなくても多すぎでも病気になります.
【例えば】
成長ホルモン分泌不全症は成長に必要なホルモンの不足により低身長を来す病気ですし
,
逆に多すぎれば巨人症のように末端肥大などが起きてしまいます.

成長や発達のタイミングが早すぎても遅すぎてもうまくいきません
【例えば】
出産のタイミングが早すぎれば
, 肺が成熟していないために呼吸のサポートが必要となりますし, 
思春期の体内分泌的な変化が年齢が思春期になっても起きなければ検査や治療を行う必要があります.

このよう小児科の治療は【子どもの成長と発達が適切な時期に起きることをサポートする治療】と言えるかもしれません. 自分が担当した患者さんの病態が子どもの成長発達の過程に影響がでた結果ではないか?という視点を持つことと小児科研修がエキサイティングになると思います.

3.お父さんとお母さんになったときに役立つ小児科研修にする

医学生, 研修医の中にはすでに自分の進路を決めている方もいると思います. 将来進みたい科が小児科以外の場合, 小児科の研修は無駄だと感じたり, 退屈だと感じるかもしれません.

実際, 僕が大学病院で接する医学生や研修医の方の中にも, 将来は小児科以外の科に進むことを決めている方はいます. そういう時には

「この小児科研修を自分がお父さん/お母さんになった時に役立つ研修にしよう」ということを伝えています.

【具体的には】
呼吸器感染症・胃腸炎の子どもの担当医になったら, 将来自分の子どもが同じ感染症にかかった時に適切な治療は何か, どのタイミングで病院に連れていくか, の判断を学ぶことができます.

【患者さんの体験から学ぶ】

全ての医者は、患者さんが病気になった体験を通して学んでいます. しかし, 患者さんのことを他人事として考えてしまいがちです.

【目の前にいる患者さんに起きていることが自分の家族に起きたら】 そう思うと患者さんに対する配慮や患者さんの家族に対する配慮の仕方が変わってくるはずです.

もし自分の家族が同じ病気にかかってしまった時に少しでもいい対応をしたい, と思えば学ぶ姿勢もより積極的になると思います.

小児科は大人に比べて体力が少ない子どもを対象としているため, 軽い病気=common diseaseが多いので, 目の前の患者さんと同じことが自分の子どもに起きたら, という想像がしやすいと思います.

【医者にも家族がいて, 家庭人としての役割がある】

小児科は子どもだけではなく家族のことも見る科です. だからこそローテートする医学生, 研修医にとっても自分の将来の家族像について考える機会になると思います.

私たちは白衣を着て, 患者さんの治療を行う医者として病院で働いています.
しかし, 同時に私たちにも家族がいます. それは病院にいても家にいても変わりません.

医学生, 研修医の間はなかなか将来自分がどのような生活をしているか, 自分がどのような家族を作っているか, は想像できないと思います. ただ医師としてスタートし, 土台を積み上げる最初の10年は多くの人にとって, 結婚や出産, 子育てを行う25-35歳の時期と重なります.

ぜひ小児科ローテを通して自分がどんな医師になりたいかと一緒にどんな家族を作りたいか, どんな家庭を作りたいかも考えてみてください.

まとめ・関連記事

小児科研修を行う上での【3つの心構え】

  1. 小児病棟でお子さん・お母さん/お父さんとすれ違う時に挨拶をしよう
  2. 小児科でしか学べない成長と発達について学ぼう
  3. お父さんとお母さんになったときに役立つ小児科研修にする

をお話ししました.

もう少し詳しく

  • 【患者さんの立場で考える】
  • 【医者は患者を見るが, 患者と家族も医者を見ている】
  • 【健康・正常を理解することが病気・病態を理解することにつながる】
  • 【患者さんの体験から学ぶ】
  • 【医者にも家族がいて, 家庭人としての役割がある】

という視点についてもお話ししました.

少しでも参考になれば嬉しいです.

ぜひ有意義な小児科研修にしてください!

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